ガルーシャは他の皮革にはない魅力的な表情をしています。その反面、他の皮革と比べ物にならない程、固いので加工や全ての工程において他の皮革とは別物です。フルオーダーで依頼を承け、仕上げられるところは少なくガルーシャは特に労を費やします。
ガルーシャとは、エイの事。
このガルーシャの表面には人間の歯や骨と同じ成分のリン酸カルシウムで覆われています。その表面は固くとても丈夫です。慣れていない製作した事がない職人が加工すると、真っ直ぐ切断するだけでも一苦労です。
今回のご依頼はボツボツした表面をそのまま生かしたキャビアタイプ、色は国内レアなネイビー色のガルーシャ皮革から製作しました。
インナーはHERMESオーストリッチのクイルマークなしのスムース部分を使用。コバインクはヨーロッパ有名ハイブランド御用達のインクを独自調合し更に丈夫なインクに仕上がっています。コバインクはインナー同様ピンクでファッショナブルで個性的なカラーコーディネートで仕上がっています。
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ガルーシャのコバの断面もボコボコしている関係でコバインクもその面に合わせて塗らないとボコボコした凹のところにインクが流れていってしまいます。
インクを気を付けながら塗らないといけないのでキャビアタイプは色々と手間と時間がかかります。コバインクはもちろん乾いては磨いて、また塗って。その繰り返しによりここまで綺麗に磨きあげていきます。
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時間はかかりますがここまでコバ面をやると、面に1つもスジなどなくなり、どこを触ってもツルツルになり丈夫な仕上がりになります。ここまで時間をかけて丁寧に仕上げるところはそこまで多くはないと思います。
当初の打ち合わせではステッチなしと言う依頼でしたが、丈夫に作ってくれと言うリクエストがあったので、ステッチを入れないと物理的に作れないので、少し粗めですがそれの方がステッチが目立たないので、「粗めのピッチ幅で手縫い仕上げ」と最終判断でお客様に提案しました。
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通常のハンドステッチ(特殊加工)を入れると溝を切るので色々と目立ってきますので当初のイメージとは変わってきてしまいます。その辺りはオーダー時に合わせてご相談ください。
両サイドにはFULLBRIDGEオリジナルの定番仕様デザインですが切り目を入れる事によってカードの出し入れ時にテンションを逃がす仕様となっています。
そうする事によって口部分はヘタれず長持ち致します。
FULLBRIDGEのフルオーダーメイドにルールやメニューはありませんが、小さいカードケースでスターマーク入り、センター取りとなると他の取り方を考えてはみますが、必然的に今回の仕上がりになってしまうでしょう。
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でも残ったガルーシャ皮革と完成したのを面積差で比べるととても贅沢な取り方をしていると改めて思ってしまいます。
ご用命頂きありがとうございます。